同人誌を作るということは、一冊の本を作ることと同義。内容はもちろんのこと、レイアウト・デザインのみならず、製本するならば装丁についても深く精査する必要がある。このように注意を払うべきところは数えきれない程あるが、今回は特に「表紙」の重要性について語ろうと思う。
本は表紙が8割
「表紙は本の顔」と言われるように、表紙は作品の第一印象を作る。「表紙買い」という言葉もあるように、魅力的な表紙は読者が興味を示す最初のきっかけとなる。逆に言えば、魅力的ではない表紙はそもそも手に取ってもらうことすら難しい。本はまず読んでもらうことが重要であるため、表紙の制作には力を入れておきたい。
魅力的な表紙とは?
魅力的と感じるかどうかは人により、その定義はあいまい。そのため、必ずしも画力の高さやデザインのセンスがそれに繋がるわけではない。本屋に入れば、(劇的に上手くはないけれど)どこか気になってしまう本を一度は目にすることがあるだろう。その本の表紙には人を惹きつける魅力があるからである。ではその特徴をいくつか紹介しよう。
1. 視覚的インパクト
表紙のデザインは視覚的に強い印象を与えれば、発見されやすい。鮮やかな色使いや大胆なデザインにすれば、他の本と並んでいても一際目立つからである。例えば、明るい赤や深い青などの強い色彩は、遠くからでも読者の目を引く。
2. 人の感情に訴えるデザイン
次に、感情を揺さぶるデザイン。感動的なイメージや緊張感のあるシーンが描かれている表紙は、興味を引きつけやすい。ロマンス小説であれば温かみのある色合いとロマンチックなイラストが効果的。
3. シンプルで明快なデザイン
過度に複雑なデザインも効果的だが、逆にシンプルで明快なデザインの方が好かれる場合もある。余計な要素を排除し、シンプルに重要な情報やイメージのみに焦点を当てることで、視覚的なメッセージが明確になる。例としては、文字を多用したビジネス書や自己啓発本が多い。デカデカとしたゴシック体を表紙いっぱいに敷き詰めるのはよくある手法。
4. 興味をそそられる要素
単純に、読者の好奇心を刺激する要素の表紙も良い。例えば、ミステリー小説の表紙であれば謎めいたイラストや写真を使うなど。これにより、見た人は「この本には何が書かれているのだろう?」と興味を持ち、中身を確かめたくなる。
5. 一貫性とブランド
特定のシリーズや著者の本であれば、一貫性のあるデザインも、手に取りたくなる要素と言えよう。シリーズ全体に共通するデザイン要素があると、コレクションしたくなる魅力も増す。例えば、「ハリー・ポッター」シリーズのように、一貫したデザインはシリーズ全体に統一感を与えてくれる。
6. 質感と仕上げ
デザインとはやや異なる話になるが、実際に手に取ったときの質感も大切。エンボス加工や箔押し、マット仕上げやグロス仕上げなど、直接の触感にこだわることで、好きな人にとっては刺さる本となる。
6. キャラクターの目線
人物や生き物など、キャラクターが表紙の中心の場合、メインとなるキャラはなるべくこちら(読者)側を見ている方が望ましい。「目は口程に物を言う」ということわざがあるように、視線を向けられるだけで人は気になってしまうもの。視覚的な接触により、読者に対してキャラが「こちらに話しかけている」ような印象を与え、親近感や興味を引きやすくなる。
こっちを向いていないことが悪いと言うわけではなく、横顔や閉眼も特定のストーリーやムードを伝えるのに有効。例えば、何かを考えている・夢見ている・あるいは特定のシチュエーションにいることを示唆できる。
外注も手
コストを気にしないのであれば、業者や個人に発注してしまうのもあり。メリット・デメリットは以下↓
メリット
- プロのクオリティ
経験豊富なデザイナーであれば高品質なデザインが期待でき、上手くはまれば表紙だけでなく内容の魅力も引き立つ。 - 専門知識の活用
印刷し製本する場合、紙や装丁に関する専門知識を持つデザイナーに依頼したい。箔押しやラミネート加工など、紙ならではのデザインが可能で、より効果的なビジュアルが期待できる。 - 客観的な視点
第三者の視点はとても重要。自分では思いつかなかった新しいアイデアや、発想が生まれるかも。
デメリット
- コストがかかる
プロに頼むとはそういうこと。価格や納期も気にすべき点であるが、しっかり実績のある人を選ぶ方が失敗の確率を減らせる。 - 時短にはならない
発注さえすれば、あとは勝手にやってくれるデザイナーもいるにはいる。しかし、表紙は同人誌の顔。時間をかけてでも、デザイナーと自分のイメージをすり合わせていく必要がある。 - イメージの共有が難しい
自分の作品のイメージやコンセプトをデザイナーに正確に伝えられなかった場合、期待通りの結果が得られないかも。相違がないようにラフ案を2~3つ要求するなど、構想を固めておこう。
中身がカスでは意味がない
表紙と内容の格差が激しい、いわゆる意図的な表紙詐欺は読者の信用を一気に失うので、絶対に止めよう。確かに表紙は手に取らせる重要な要素。しかし、最終的には中身の質がその本の価値を決定付けることを忘れてはならない。良い表紙と良い内容……その両方が揃って初めて、多くの読者に愛され、記憶に残るものとなるのだ。
まとめ
以上から、表紙には十分な時間と労力を投資することが重要。また、自分自身のデザインスキルを磨くために、他の同人誌やプロの作品から学び、参考にすることもオススメ。そして何より、自分自身の作品に誇りを持ち、それを表紙に表現することが大切。あなたの情熱と創造性が、読者にとって魅力的な表紙を生み出すことを期待している。